- 遺産分割とは
- 遺産分割の例
- 遺産分割協議書とは。証明書との違い
- 遺産分割協議書を作成するまでの流れ
- 遺産分割協議書の提出先、使い道
- 遺産分割協議書のトラブル事例
- 丸の内相続相談センターにおまかせください
遺産分割とは
遺産分割とは、故人の相続財産を相続人同士でどう分けるかを決める協議です。
よくある誤解として、法定相続分を基本として分けなければならないと思っている方や、遺言があれば遺産分割協議ができないと思っている方もいますが、法律上制限はありません。
全員平等を基本に定めてもいいし、一人が遺産を総どりする分割協議も有効です。不動産は配偶者へ、預貯金は子供全員均等に分けることが従来は多かったのですが、令和2年法改正による配偶者居住権を使うことも増えてきました。
また、もし遺産分割協議後に新たに財産が発見されたときの対応方法や、相続税の納付について、定めたほうがいいケースもあるでしょう。
つまり、どういった分け方にするかは当事者(相続人全員)の意思に任されていて、税や法について総合的に判断して記載する必要があります。
遺産分割の例
どんな分け方をしても自由です
遺産を分配する方法として、以下のような例があります。相続人の意思の反映のために、柔軟な分割方法が認められており、以下は一例にすぎません。ご相談頂く中で、「そんな分け方もあるんだ!」と驚かれる方も多くいます。
- 相続人間で全くの均等
- 不動産を住んでいる相続人へ、預貯金関係は他の相続人で均等
- 相続人ABCのうち、 A相続人は100分の97、B相続人100分の2、C相続人は各100分の1の割合で相続する
- A相続人が全て相続して、B相続人とC相続人は何も相続しない
- A相続人は不動産、B相続人は○○銀行の定期預金、C相続人は△△銀行の普通預金
- 不動産はすべて全て売り、売却代金をわける。
遺言がある場合であっても、相続人全員の協議によって全く違う分け方をしているケースも多くあります。
遺産分割協議書とは。遺産分割協議証明書との違い
遺産分割協議書とは、遺産分割協議を行った際に、その内容を記しておくものです。民法では、協議書を作成しなくても遺産分割協議は有効に成立します。しかし、疑義が起こったり後々のトラブルにならないよう、証拠として残しておくことが一般的です。そのため、主に自筆で署名、実印で押印、契印をする等の手続きが求められます。
協議内容を第三者に証明しなければならない場面として、不動産の相続登記手続き、銀行の預貯金解約、相続税申告に使う等があります。
遺産分割協議書に収入印紙を貼る必要はありません。
収入印紙を貼る「課税文書」は法定されており、遺産分割協議書はこれに該当しないためです。
国税庁のホームページには、収入印紙を貼るべき書類と印紙税額の一覧表が掲載されています。
(詳細: 第1号文書から第4号文書までの印紙税額の一覧表)
遺産分割協議「証明書」と異なり、相続人全員が一冊に署名と押印を行います。
相続人の人数が多い場合や遠方に住んでいる場合には、遺産分割協議「証明書」の作成を検討しましょう。
※遺産分割協議証明書についてはこちら
遺産分割協議書を作成するまでの流れ
相続が開始したらすぐに遺産分割協議、と思っている方も多いですが、先に戸籍収集によって相続人を確定させたり、財産調査を行う必要があります。遺産分割協議書を作成するのは、相続手続きの流れの中では中盤です。
相続人全員によって協議をする必要があり、法務局や銀行に対して戸籍で証明する必要がありますので、以下の流れになることが一般的です。
遺産分割協議書作成までの流れ
1.相続人を確定させるための戸籍収集
↓
2.相続財産の調査
↓
3.相続人間である程度の分割内容を決める
↓
4.遺産分割協議書の作成
↓
5.相続人全員が遺産分割協議書に署名、捺印(または証明書の作成)
遺産分割協議は相続人全員で行わなければ無効となってしまいます。家族はあまり考えたくないことですが、相続のうち、20件に1件は婚外子が発覚するというデータもあります。まずは戸籍謄本を集めて相続人を確定させる必要があります。
大体は、相続のご依頼をいただいたらすぐに戸籍収集を開始して、同時並行で財産調査や協議内容の準備を進めることになります。
家族仲がよく、比較的近くに住んでいる場合には、コミュニケーションをとることが容易ですが、相続人の子のうち1人が海外に居住しているケースもあり、戸籍収集に時間がかかる可能性があります。代襲相続や数次相続、兄弟相続、相続放棄が起きている場合には、戸籍収集も複雑になるケースが多いので、専門家にご相談ください。
また、遺産分割協議書には必ず遺産を記載するので、
それらの後に、遺産分割の話し合いができたら、ようやく遺産分割協議書を作成して、相続人全員で署名捺印を行う流れになります。
POINT! いきなり遺産分割協議書を作成するのではなく、財産の洗い出しや相続人の確定が先
遺産分割協議書の提出先、使い道
遺産分割協議書には、実印で押印して印鑑登録証明書を添付します。
法律上は認印でもよいのですが、預貯金解約や不動産の名義変更に使うため、確実に相続人本人が捺印したことが求められるので、実印で押印されていない遺産分割協議書は使いものになりません。
また、印鑑については以下の点に気を付けてください。
■印鑑証明書と期間制限
相続登記の手続きにつかう印鑑証明書には3か月に期間制限がありませんが、銀行の手続きでは3か月や6か月の期間制限があることがあります。実印との印影一致には気を付けてください。また、印鑑証明書は遺産分割協議書に合綴せずに一緒に提出することが一般的です。合綴するスタイルでは、銀行や法務局の印影照合ができなくなる可能性があり、法務局で分解されることもあります。
■捨て印、割り印について
捨て印があると、相続人のうち一人が遺産分割協議書の内容を書き換えて、不動産手続き等を進められるリスクがあります。しかし、不動産情報の軽微な訂正のため等、便利なこともあります。捨て印を押すときには、相続人間の関係を考慮して慎重に判断しましょう。
割り印(契印)のない遺産分割協議書であっても法的に無効になるわけではなく、不動産の名義変更手続きに利用することも可能です。しかし、割り印のない協議書で相続登記をすることを司法書士に拒否される可能性もあるため、協議書が2枚以上になる場合には、割り印を忘れないようにお気をつけください。
遺産分割協議書は以下のところに提出する可能性があります。
役所関係の手続きで、だいたいの遺産分割協議書の原本はコピーをとって返却してもらえますが、もし不安だったら、役所提出用を作成することもあります。
1.金融機関(銀行・信託・証券会社)
金融機関は、誰が預貯金を相続するかを書類で確かめるために、遺産分割協議書の提出を求めてきます。金融機関の窓口や郵送手続きでは、コピーを取って原本を返却してくれます。その口座にいれている財産額がごく少額であるときには、不要なこともあります。
2.法務局
相続登記を申請する場合には、遺産分割協議書が必要です。(法定相続分で登記する場合には必要ありません)
こちらもコピーと原本を同時に提出して、原本還付が可能です。
3.税務署
相続税申告の際に、遺産分割協議書が添付書面となります。コピーでも問題ありませんが、税理士によっては原本確認をすることがあります。
4.証券会社
遺産に証券、株式がある場合には、証券会社に提出する必要があることもあります。
なお、同時に相続する人名義の口座開設を求められ、単に解約や名義変更のみをする手続きとは異なります。
4.運輸支局
不動産登記手続きと同様に、自動車の名義変更にも必要です。
遺産分割協議書の見本と注意点
記載例をみながら手続きを進めます。父親の甲斐太郎が亡くなり、息子2人が遺産分割協議をするような典型的なパターンです。財産は、自宅の不動産、預貯金1行、現金とした記載例です。
遺 産 分 割 協 議 書
被 相 続 人 甲斐 太郎
最 後 の 住 所 東京都千代田区丸の内一丁目1番1号
最 後 の 本 籍 東京都千代田区丸の内一丁目2番2号
登記簿上の住所 東京都千代田区丸の内一丁目3番3号
住所、氏名は戸籍の記載どおりに書きます。間違いがあると相続手続きができない可能性があります
被相続人甲野 太郎死亡により相続が開始し、共同相続人全員により協議を行った結果、後記のとおり遺産分割協議が成立した。
1. 甲斐 一郎 が取得する遺産
所 在 千代田区丸の内一丁目
地 番 500番1
地 目 宅地
地 積 200.00㎡
所 在 千代田区丸の内一丁目
家 屋 番 号 500番1の1
種 類 居宅
構 造 木造瓦葺2階建
床 面 積 1階 54.32㎡
2階 53.11㎡
不動産の一般的な書き方です。
2.甲斐 二郎 が取得する遺産
三菱東京UFJ銀行 丸の内支店
現金 金300万円
3.その他の財産及び債務
その他の財産及び後日発見された財産、債務は、甲斐二郎が取得するものとする。
以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したので、これを証するため本書を作成し、署名捺印する。
令和4年1月1日
【相続人甲斐一郎の署名捺印】
住 所
氏 名 実印
【相続人甲斐二郎の署名捺印】
住 所
氏 名 実印
父親の甲斐太郎が死亡したことにより、一郎と次郎が相続人となるケースです。
実家不動産と預貯金を相続するケースで、借金はないことを前提とした典型的なものです。
後々になって相続財産が発見された場合には、二郎が相続することになっています。ずっと使っていなかった通帳が見つかったり、あまり価値のない土地が見つかったケースに備えることで、紛争予防や相続手続きに役立ちます。しかし、高額ではないことを想定していますから、滅多にないことですが1億円が新たに発見された場合には疑義が生るでしょう。
遺産分割協議書のトラブル事例
遺産分割協議ができる状態とは、相続人全員と連絡がとれて、話し合いがまとまりそうな状態を指します。
しかし、協議書の捺印前・捺印後にそれぞれ気を付けなければ、「争続」を巻き起こす可能性がありますのでご注意ください。
協議書の捺印前~協議書をいきなり送りつけない~
事前に他の相続人に相談せずに協議書を作成して、いきなり送りつけることはトラブルのもとです。疎遠な相続人同士で、なるべく連絡をとらずに進めたい気持ちもわかります。しかし、初動を間違えると不信感が消えずに裁判に発展するという典型的な事例です。また、遺言を作成した人は、相続税や債務負担、葬儀費用等を考慮して現金分配を行ったつもりでも、財産総額から見ると著しく低い金額である可能性もあります。
相続不動産の価値や株式の評価は、人によって異なる可能性もあります。相続財産は現金だけではなく、不動産等の全財産を考慮します。
白紙委任状や白紙遺産分割協議書に捺印を求めることは滅多にないことですが、裁判になっているケースでは珍しいことではありません。結果としていきなり協議書を送りつけたり、印鑑証明書の提出を求めることになっていないか、くれぐれもお気をつけください。
協議書の捺印後~捨て印を勝手に使わない~
住所や氏名、不動産の表示方法が誤っていたり、役所等で記載方法の変更を求められることはよくあります。捨て印があれば、これらの記載方法を訂正することが可能です。
しかし、勝手に捨て印を使って訂正をしてしまうことも、相続人間の不信感を生む原因となります。
財産を変更する大きな変更はもちろん、住所等の軽微な訂正であっても、必ず一度連絡をしてから行うようにしましょう。
遺産分割協議の時期
遺言書で遺産分割が禁止されている場合(相続開始から5年を超えない範囲:民法第908条)を除いて、相続人はいつでも遺産の分割をすることができます。(民法907条)そのため、亡くなってから初7日を過ぎるまでに協議を始める方がいる一方で、逆に長年放置をして、相続人の相続人(数次相続)が協議を行うことも可能です。
しかし現実には、不動産を売却して財産を分けたり、相続税申告(相続開始から10か月)の期限があるため、相続開始から1か月ほどで専門家に相談することが多いようです。
無理をして早く始める必要はありませんが、なるべく早くに専門家に相談することで、余裕のあるスケジュールで進めることが可能になります。
遺産分割協議書の作成方法まとめ
遺産分割協議書の記載例は当ホームページをはじめ、各サイトを参考にすることができます。
それらを参考にA4で印字して、署名と捺印をすることで遺産分割協議書を作成することが可能です。
もし、相続人が大勢いる場合や、財産関係が複雑な場合、相続手続きを早急に進めたい場合には、専門家にぜひご相談ください。法務局や税務署、銀行に提出する場合には、それぞれにあった方法で作成する必要があります。
遺産分割協議書の作成は、そう難しいものではありません。
しかし、対銀行・対法務局・対税務署について適正なものを作成する必要がありますので、ネットの雛形で安易に作成してしまうのではなく、関係提出先にあった適正な方法で作成しましょう。
当センターでは、不動産や預貯金解約だけではなく、税理士と連携して手続きをすすめることが可能です。